舞台はNPBじゃないほうがいい『いま、野球観戦の楽しみ方を漫画にするなら、どのような内容にしますか?』 漫画家・鈴木みそ インタビュー(10)
- 投稿日:2017/06/07 20:00
- 更新日:2017/05/04 04:50
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連載
漫画家・鈴木みそ インタビュー
鈴木みそ流の学習漫画
「マンガ 物理に強くなる」「マンガ 化学式に強くなる」について
今回の内容
本連載は、ルポ漫画や電子書籍出版などで有名な漫画家・鈴木みそさんにお話を聞かせていただくインタビューとなります。
第10回となる今回は、『いま、野球観戦の楽しみ方を漫画にするなら、どのような内容にしますか?』について聞かせて頂きました。
漫画家・鈴木みそさんについて
漫画家。1963年8月12日生まれ。静岡県下田市出身。
美術予備校時代、編集プロダクションで、ライター、編集者、イラストレーターとして雑誌作りに関わる。
ゲーム雑誌『ファミコン必勝本』『ヒッポンスーパー』などで、ゲーム攻略、記事、コラム、イラスト、を書く。
東京芸大油絵科除籍後、編集プロダクションから独立。漫画家になる。
ビッグコミックスピリッツ、野球漫画『ネットワーク22』でデビュー。
2013年『限界集落(ギリギリ)温泉』をAmazonでセルフパブリッシュ、1千万円を売り上げて話題になる。
野球の面白味は、「物理」だけではない
──前回、野球は物理で考えると面白いというお話をお聞きしましたが、たとえば物理学者がプロ野球中継の解説をしたら、もっと野球が広まったりすると思いますか?
いいえ、それはしないと思います(笑)。例えば数人でお酒を飲んでいるような席で、野球好きが物理学視点で解説をし始めても、「また始まったよ、うるせえな」っていう反応だと思いますし(笑)。
──(笑)そこは関係ないんですね。
そうだと思います。
僕が感じた野球の面白さの一つには物理学視点で見るというものがありましたけど、野球の魅力はそれだけではないです。人それぞれが感じることのできる無限の楽しみ方があると思います。
野球の試合そのものは楽しいものです。知識はその楽しみ方を広げる時に役に立つものだと思います。
「プロ野球だけではなく、高校野球などのアマチュア野球も見る」
「野球の細かいルールを覚える」
「野球漫画をたくさん読む」
こういった知識を得る活動一つ一つは「野球をより楽しむ」ための「趣味」だと思います。
──確かに納得です。
で、ちょっと学習漫画のテーマに戻しますけど、なんで勉強するかというと、知識が増えた方が楽しいからですよね。
「知識を増やすということは世の中をより楽しく見るための行為」だと思います。そして、それはきっと人生を豊かにします。
そして、野球などのスポーツを観戦するという体験そのものも「知識を増やす行為」だと思います。見ないよりも見たほうが、ちょっと心がわくわくする。
野球があるから生きていけるみたいな人もいるぐらいには、「野球観戦をする」ということは「楽しい情報を得る行為」なんだと思います。
鈴木みそ・著 『マンガ 野球観戦に強くなる』 がもしあったら
──これは例えばの話なんですが、みそさんに『漫画・野球観戦の楽しみ方』を依頼させて頂いたとしたら、どのような内容にされますか?
そうですね。まず野球ファンのキャラクターをパッと考えると、「ものすごい熱く応援する阪神ファンみたいな人」や「すごくクールな視点で野球を観る人」など、いろんなパターンのファンがいますよね。
──そうですね。
「細かいことはどうだっていいんだよ。野球はただ見てりゃいいんだよ」という大雑把な人もいれば「今の外角の球はありえない」というように、細かく試合を説明するファンもいる。
一人一人みんな野球の楽しみ方が違うので、それぞれにキャラクターを立てます。
その上で、それぞれの立場にきっとある「野球の見方が作られていった理由」を描いていきます。例えば、過去に本格的に野球をやっていた人は、プレーヤー視点の見方が強いとか、そういった風に。
あとはストーリーですね。お客が入らない地方の球場があって、なんとかしてお客さまを増やさないと、もうこの球場は、つぶすことになっちゃう、なんとかしないと!みたいな状況を用意して、周囲のみんなで何かを始める話にします。
──『限界集落温泉』で描かれた舞台に近いような感じでしょうか。
そうですね、そういうストーリーにもできます。自分の町を救うような話をベースにする。
みんなで球場を盛り上げるために、キャラクターはそれぞれの立場で色々な事を考えるんです。
例えば「球場の売り子をどうしようか」という問題があるとします。
野球を分析的に観る人は「野球は◯回が一番盛り上がるから、ビールはそのタイミングで売りに行かすべきだ」と提案します。
じゃあそれを誰にお願いすればいい?という問題には「野球に興味がなくてもいいから知り合いのお母さんとかお姉さんたちを連れてくればいい」と町内会のおっさんが言ったりする。
さらに、その辺にいる元プロ野球選手の酔っぱらいを出して、周囲が「もう一回復帰させることはできないか」と画策したりとかもします。
舞台はNPBじゃないほうがいい
舞台はプロ野球(NPB)じゃなくて、四国にある独立リーグみたいなのがいいです。
──四国アイランドリーグplusですね
そうです、ああいうリーグをいかに盛り上げていくかっていう話にします。
本当は引退したままでいるしかない、復帰なんて到底無理な酔っぱらいのおじさんをなんとか再生できないかっていう話は、発展途上のリーグの方がリアリティーが出せます。
さっき言ったような、元プロ選手のおじさんというに対して、周囲がよってたかってなにかする、っていう風にすることができれば日本プロ野球よりも親近感が出て、魅力のあるストーリーになるんじゃないかと。
あとは、「野球はこんな見方をすると楽しいよ」って説明する人がいると、また別の展開が生まれます。
だから、いろんなやり方があります、無限にね。
──無限ですか!例えば、野球をする側からではない、「応援する側」からの漫画は少ないと思いますが、そういった視点の漫画はどうでしょうか?
そうですね。そのほうが共感は得るかもしれないです。でも逆にいうと、野球に興味がない人は「野球のなんとか」という情報には興味がないので、野球に対しての最初のフックがないんですよね。
その場合は、最初は野球ということを隠します。例えば「引退したアイドル」だとかを主人公にして。そうするとアイドルの興味のある人に対してのフックになりますよね。そういうキャラクターから、徐々に野球のほうに引っ張っていくというような構造になるかなと思います。
あとは、真正面からいくのであれば、「ナベツネそっくりなキャラクターを出す」とかもありかもしれません。
──それはわかりやすい(笑)たしかに野球に興味がなくてもナベツネを知っている人はいそうです。
他にも考えられますよ。「もうこのままじゃ野球は駄目になる!みんなで改革しよう!」っていう人達を描く実俗ものとかも良さそう。視聴率を上げるためにこんな工夫をしています、とかをフェイクドキュメンタリーで見せたりね。
今回のインタビューは以上です。
次回は『今の野球が売り出すべきコンテンツとは?』について聞いていきます。
鈴木みそ
漫画家
1963年静岡県下田市出身。
美術予備校時代から、編集プロダクション「キャラメル・ママ」のライターとして雑誌作りに関わる。
ゲーム雑誌などで、ゲーム攻略、記事、コラム、イラスト、をこなす。元編集者兼ライター兼イラストレーター。
東京芸大油絵科除籍後、多忙すぎるプロダクションから独立。漫画を描く。
twitter: @MisoSuzuki
blog: CHANGE
聞き手・編集:YAQUE 編集部
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